芯
「掘り当ててしまった。」
「何を?」
「昔のブログ」
「えっ」
10年ほど前に書いていたブログを、先日偶然、掘り当ててしまった。
何を思ったのか突然、当時利用していたウェブサイトの名前とIDで検索をかけたところ、見事にヒットしてしまったのだ。
読み返す。
………………。
非常におぞましい内容だった。
書いていた当時の僕は中学生〜高校生くらいの年齢で、非常に多感な時期だ。
そのブログは主に、
1.遊戯王
2.おすすめの楽曲
3.学力イキり
によって構成されていた。
順に説明していく(既に若干身体が痒くなってきた)。
1.遊戯王
僕は昔、遊戯王カードがとても好きだった。
どれくらい好きかと言えば、結構本気でデッキを組んで近くのカードショップで週末開催される大会に出場し、優勝したりしていた。
すごい。
いやすごくない。
何も誇れることではない。あくまで趣味だ。
それが転じて、ブログを書くネタに困った僕は(あるいは僕はこんなジャンルのデッキも組んじゃうんですよ〜という自己顕示欲によって)、組んだデッキの内容や解説をブログに載せたりしていた。
この記事によって、「僕のデッキを診断してください!」などというコメントが少しずつ付き始め、更にはショップで「大会上位の人を呼んでサークルを作っているんですが」などとスカウトをされ、僕の承認欲求は大いに満たされた。
いや人の輪広がっとるやないかい。
こうして文章で見ると鳥肌もさほど立たないのだが、その実「w」(所謂全角単芝)であったり、環境批判、もしくは大会に出た際のレポートでは「やっちまったw」などとイキり全開の文章を披露していて、非常に痛々しい。
2.おすすめの楽曲
中学生の頃、僕の聴く音楽は、ほとんどがサザンオールスターズ、KinKi Kids、平井堅によって構成されていた。
これが高校生になると、アニソン、ボカロと手を伸ばし、最終的にバンド系の音楽を聴くようになる。
中学生の頃は趣味が合う相手が本当にいなかった。
サザンオールスターズは完全におっさんバンドだし、KinKi Kidsはどちらかと言えばお母さん世代、僕たちの世代でジャニーズと言えば多分嵐だった。
平井堅、論外である(悲しい)。
話せる相手は本当に限られるのだが、どうしても身近に趣味を共有出来る相手が欲しい、更に言えば自分の聴いている音楽の良さを皆に知ってほしいと思った僕は、何故か、「好きな楽曲のタイトルと、YouTube動画の埋め込み」のみによって構成されたブログを更新し始める。
Q.何故だ。
A.これがシュッとしてかっこいいと思っていたからだ。
そう、これをすれば皆聴いてくれるもんだと思っていた。
そんなわけ、あるか。
後述の学力イキり含め、イキり文章連発のブログ記事群の中に唐突に現れる、タイトルと動画のみのブログ。
最早怖い。
何を考えていたんだこいつは。
3.学力イキり
これが酷い。
本当に酷い。
特に中学3年生。
もう、イキりのテンプレートをことごとくこなしている。
受験期間近の「そろそろ本気出しちまおっかなw」に始まり、
受験終了後の「結果は出してきましたよwまた周りとの差が開いちまったかなw」で終わるこの一連の流れは、芸術とも呼べる出来映えである。
周りの人間を完全に馬鹿にした内容、大したことは無いのに何故か天狗が止まらない。
ちなみにこの男、第一志望の高校に落ちているのだ。
何でそこまでイキれるんだ。
しかも一回一回の内容が異様に短い。
雰囲気で言えば、
タイトル「そろそろ」
本文「本気出しちまおっかなw」
などとなっている。
もう本当に、この記事を発見した際は本気で死のうか悩んだ。
ここで気付く。
ブログを消せばいいのだ。
消してしまおう、こんなもの。
幸いにもパスワードは通った。
後は何か、多分どこかのメニューを開けば消すのは簡単なはずだ。
しかし消せなかった。
「黒歴史」と言うくらいだ。
このまま取っておいて、有事の際は戒めのために読み返せるように、残しておこう。
と言うのも
僕は所謂「気持ち悪いアイドルオタク友達」が非常に好きだ。
前日に「推しメンのライブを見に名古屋おいでよ」と誘ったら当日新幹線に飛び乗るオタクだとか、推しメンへの愛故に飲み会中に泣き出すオタクだとか、もしくはマスターベーションに興じている最中に推しメンの顔が浮かんでしまい、結果的にEDになってしまうオタクだとか。
どれも、推しメンへの愛が大きすぎるが故に、結果的に気持ち悪くなってしまっただけなのだ。
更に言えばどのオタクも、その過去の話は総じて気持ち悪い。
今の動向以上に、恥ずかしいほどに気持ちが悪いのだ。
過去のブログではイキるし、友達がいないことが今となっては誇りであるし、それが何やかんやあって今アイドルオタクになっている。
何かコンテンツに対しての大きな愛を、発散する手法を誤ってしまうが故に、多大な「気持ちの悪い黒歴史」を重ね、少しずつ重ねた失敗を踏みつけてその底から這い上がって、今多少まともな存在になっているんだ、多分。
僕はちゃんと、「気持ち悪いアイドルオタク」になれているんだろうか。
それを改める材料として、あのブログはもう少し残しておこう。