言葉
自分のことを、かなり後ろ向きな性格だと思う。
何にしても基本的に悪い方向にまず考えた上でしか向き合うことが出来ないからだ。
利益よりもリスクを気にするし、最悪の展開をまず考えてからでないと落ち着かない。
そんなに器用な人間でないので、それでも失敗だらけなんだけど。
口にはあまり出さない。場の空気が悪くなるから。
悶々と溜め込むことで、また少しずつ気持ちが落ち込んでいく。
そんな中で、僕に向けてこんな言葉を吐いた女の子がいた。
「はらくんって頭ハッピー野郎だよね。」
そうだろうか、と浮かぶ疑問と共に、少しだけくすぐったい感じがしたのは本当だ。
何故かちょっぴり嬉しかった。
ある日の僕は、気の強そうな女性と話していた。
テーマは、「致命的なドジッ子」についてだ。
「致命的なドジッ子」は、思ってもみないタイミングで致命的なミスをやらかす。
でも、と彼女は言った。
「そういう人って、何だか愛せません?」
「それは、『愛せる』と言うことによって、相手を受容しているだけなのでは。」
口に出しながら、自分で納得してしまった。
なるほどな。
またある日、僕はシンクに溜め込んだお酢の中に、大量のりんごを投入して洗っていた。
これが1時間もすれば、全てジュースになる。そういう仕事をしていた。
僕は野菜や果物を洗いながら、全国の農家を回ってお酒を飲むのが趣味、と言う年上の男の子と話をしていた。
お互い、別々の組織に所属し後輩の面倒を見つつ、そこで働いていた。
「何かもう、失敗しちゃうのって仕方ないと思うんですよね。」
テーマは後輩の話。切り出したのは僕。
「分かる、最悪こっちが何とかすればいいもんね。」
彼は非常に優しい人だった。優しすぎて、付き合った女性に尽く浮気をされてしまうのが悩みだったらしい。
「『まあ、しょうがないか』って思えば落ち着くし、怒っても仕方ないですからね。」
僕らはジュースを作り終えて、地下にある野菜室に少し足りなかった分の野菜を取りに降りた。
そこで上から店長の声が降ってきた。
「ちょっとー!!」
「はーい!?」
「これレモン入れたー!?」
「あっ」
ジュースに防腐剤代わりにレモンの果汁を入れるのはもう一方の彼の仕事で、そして彼はいつもそれを入れ忘れてしまうのだった。
「す、すみませーん!!!!」
「あんたもうこれいい加減にしてよー!!」
店長が怒っている。きっと新婚にも関わらず家に帰るのがいつも遅いことも災いしているのだろう。
彼は、とぼとぼと階段を上がっていった。
その後ろ姿を見て、そっと「まあ、しょうがないか。」と呟いた。
僕はね、言霊ってあると思うんですよ。
例えば、好きでも嫌いでもないものを「嫌い」って言ってたら、本当に嫌いになってしまうこともあると思う。
そういう言葉って何故か周りに伝染しやすくて、最近何だか「本当に君自身がそれを嫌っているの?」と聞きたくなってしまうことが多い。
僕は割と怒る事が苦手なタイプなので、何か嫌な事があって怒っても、「これは一時的なものなんじゃないか」と思うと何だかもう一瞬で引っ込んでしまうんですよ、これが。
だってその怒りがきっかけで、嫌いでもないものをわざわざ嫌いになって、それを見る機会を減らして、それを楽しむチャンスを失っちゃったら勿体ないじゃないですか。
少なくとも、僕はそう思う。
このブログ、多分一度の更新につき大体50人くらいの人が見てくれてるんだろうと(多分)思うんだけど、その内5人くらいでいいから、明日から嫌なことがあっても「でも何だか、そういうところも愛せるよね」とか「しょうがないなあ笑」なんて言って、緩やかに切り抜けてくれたら、ほんの少しだけ世界が優しくなるのかもな、と思います。
それでもやっぱりどうにも出来なかったら、僕で良ければお酒でも飲みに行きましょう。
お誘いお待ちしております。