台風

「何でキスしてくれないの?」 ある日僕は、路地裏で追い詰められていた。 目の前には怒ったフランス人の女の子がいる。 どうしようかと困惑していた。 とにかく僕は、キスをしたくなかったのである。 もちろんのこと、これは恋愛小説ではない。 欧米人には…

金色の異端児

僕が最上もがさんを知ったのは、今から3年と少し前。 雑誌の表紙や、SNSでちらほらと画像を見て、何か強烈に、惹かれるものを感じた。 そしてそのまま、当時お世話になっていた美容師さんの元に行き、 「最上もがさんにしてください」 と一言、告げた。 いつ…

脳みそ

イノシシの脳みそを食べた。 ノミとトンカチによってこじ開けられた頭蓋から出てきたそれは、表面がうっすら黒く、中は真っ白だった。 匂いを嗅いでみると、焼いた魚の白身のような、ふっくらとした香りがする。 口に運んでみる。 食感も味も、白子に近い。 …

おデコ

ある夜、僕は友達と2人でとあるバーのカウンター席に座っていた。 「ずっと聞きたかったことがあるんだけどさ。」 「何?」 「ばばちゃんにとっての"イケてる"って何なの?」 「うーん…。」 彼は、「お腹が空いた」と言って頼んだオリーブを口に一粒放って、…

ものおじ

今日で京都に来て一週間が経った。 景色は毎日変わらず緑色で、日中はうだるように暑く、日が落ちた後は嘘のように涼しい。 日が出てる間は概ね勤務先の旅館にいるため、そこまで暑さが気にならないが、今日みたいに早く終わってしまった日は、寮の近くの喫…

追跡

僕は今、20代最後のバカンスと称して京都府は南丹市、美山町に来ている。 見渡す限り山、川、田んぼ、畑、その中にぽつぽつと立っている家々。 とにかくすさまじく田舎で、コンビニまで車で30分以上かかるらしい。 早々に文明との癒着を諦めた僕だったが、何…

ケール

今日はオタクの先輩(友人?)とお酒を飲みに行ってきた。 ちょうどほろ酔いのまま家に到着したところだ。 訪れたお店は、野菜を売りにしたお店だった。 なるほど、昨年まで約二年間野菜を売っていた僕は内心ワクワクしていた。 驚いた。 野菜がどれも美味しく…

将来の夢

僕ね、実は将来の夢、「主夫になること」なんです。 毎日奥さんの帰りを待ちながら洗濯して掃除して、「夕飯何作ろっかな」って考えるの素敵じゃないですか? 夫婦生活も毎日顔を合わせていればそりゃマンネリ化するわけで、そうならないように「今日はちょ…

大切なお知らせ

今日は、悲しいお知らせがある。 それは、「残念ながら、君に才能なんてものはない。」と言う事だ。 社会とのギャップを感じている人、自分についてこれない周りに怒りを覚える人、小さな成功体験をその学生時代に積み重ねた人、様々だろう。 残念ながら、そ…

硬派

ある春先の出来事、大学生だった僕は、二日間に渡って開催される理工学部のスポーツ大会に、例年通りサークル員全員で遊びに行っていた。 一日目は参加者全員、翌日二日目の大会本番に向けて大学の施設に泊まる。 新入生が初めてお酒に触れる場としては絶好…

理由

「はらくんて、女の子みたいな話し方をするよね」 と、昔働いていたカフェの店長に、深夜の野方ホープで言われたことがある。 ラーメンを啜るそいつは、身長は175cmくらいあるのに体重が40kgくらいしか無くて、中性的な顔立ちをしていた。 恐ろしく頭の良い…

突然だが、僕のFacebookの言語は「関西弁」に設定されている。 「いいね」は「ええやん」になっているし、「コメントする」は「ツッコミ」、「シェア」は「わけわけ」だ。 通知ももちろん関西弁なので、「○○さんが✕✕をわけわけしたで!」という具合に来るわ…

昨夜スーツ屋から引き取り、「掛けておく時間の方が長いと思うので」と言う店員さんに半ば押し負ける形で購入したハンガーにわざわざ掛け直した礼服に袖を通した僕はふと気付いた。 一緒に買った黒の靴下が無い。 珍しく仕事の前に、財布も携帯もイヤフォン…